
平成12年度農作業事故防止優良事例現地調査
−北海道−
農作業安全への取り組み
北海道の農作業安全運動は、道と北海道農作業安全運動推進本部(同地区本部)が主体となって各種の運動に取り組んでいる。平成9年度から取り組んでいる「農作業事故ゼロ運動推進事業」(平成13年度まで)で、道は事業の一部を北海道農作業安全運動推進本部に委託し、道本部と14支庁所在地に設置している地区農作業安全運動推進本部で推進している。事業推進の組織・体制は右図の通りである。
農作業事故ゼロ運動推進事業は(1)農作業事故ゼロ運動推進事業(2)農作業環境診断・改善整備事業からなり、農作業事故ゼロ推進大会、高齢者・女性を重点対象とした農作業安全講習会の開催、農作業安全指導者の活用を通じた農作業環境診断、それに基づく表示板の設置や安全装置等の開発・普及、農作業事故調査等に基づく事故防止対策などを内容としている。
北海道農作業安全運動推進本部は、農作業安全運動をソフト面とハード面に分けて推進しており、ソフト面からの対応では、
(1)農作業安全対策・事故防止の啓発運動
(a)農作業安全ポスター(春・秋)の作成・配布
(b)農作業事故報告書の作成・配布、
(c)事故防止チラシの作成・配布
(d)農作業安全運動強調月間中にNHKラジオスポット放送
(e)農作業安全標語の募集と活用
(f)農作業安全情報の収集・提供
(g)農作業事故防止運動に係わる啓発資機材の斡旋、
(2)道の委託事業を基本としての実践活動
(a)農作業事故ゼロ運動推進会議の開催
(b)各地区における安全移動教室の開催
(c)農作業実態調査の実施
(d)環境改善整備の実施
(3)各地区で進めるゼロ運動推進への支援
を推進している。
一方、ハード面からの対応では、(1)トラクターの安全フレームの装着、(2)トラクターの追突事故防止のためにを対策の重点として推進した。
トラクター追突事故と低速車マーク

道の農作業死亡事故は、平成11年度調査では32件で、うち農作業に係わる事故は19件である。トラクターによる事故は10件で、全数に対して31%、農業機械事故に対しては53%を占めて最も多い。さらに過去10年間のトータル(右グラフ参照)では、125件のトラクターによる死亡事故があり、死亡事故総数283件の44%、農業機械事故総数242件に対して52%を占めている。また、負傷事故で見ると、過去10年間の農業機械に係わる事故26,478件のうち、トラクター事故は13%に当たる3,221件見られ、農業機械では最も多く、全体では家畜(4,174件)に次ぐ。
特に、北海道の場合は平成9年にトラクターに係わる事故が高い割合を示した。農水省調査ではこの年、402件の死亡事故があり、うち農業機械に係わる事故が300件、トラクター事故は農業機械事故に対して51%に当たる152件あった。この中で北海道は27件の死亡事故があり、うち農業機械に係わる事故が24件に及んだが、トラクター事故が実に17件と農業機械事故の71%を占めるに及んだ。

トラクター事故は「転倒・転落」「挟まれ」がほとんどで、そこに追突が事故原因になったものも少なくない。そこで北海道は、その対策として安全フレームの装着推進と、既に推進していた「低速車マーク」の一層の普及促進を図ることにした。
トラクター等の道路走行中の追突事故が多発傾向にあることから、道推進本部は平成3年度に「農業機械の道路走行に関する指導について」を整理し、これまで啓発指導を行ってきた。その重点的な対策は「三角低速走行マークを作り、追突事故の防止に努める」というものである。そして、平成11年度の農作業事故ゼロ運動推進事業を機に、道推進本部は(財)日本農業機械化協会が推奨している「農機用後部反射マーク」を採用、「低速車マーク」と呼称して普及推進に取り組んでいる。
農作業事故ゼロへの新たなる挑戦
北海道農作業安全運動推進本部では、安全運動推進に係わる課題を(1)これまでの運動の成果が生かされていない(2)事故防止に必要な情報が少ない(3)研修会など安全運動のマンネリ化(4)安全を指導するための資料が拙い(5)安全運動推進の経費が確保されていない−と整理し、農作業安全情報のシステム化を提唱、その実践を進めている。
それは「共通課題に対する解決策へのアプローチ」として(1)安全情報体系を整備・構築し、それに基づく“情報の確保”をシステム化する(2)コンピュータを活用して“情報の提供”をネットワークシステム化することが「21世紀を見据えた農作業事故防止のためのソフト面からの施策になる」と強調している。
こうした考えに基づき、平成8年度に「農作業安全情報システム(ASSIST : Agricultural, Safety, System, Information, Special, Technique)」を構築、その活用を推進している。このシステム体系は、農作業安全を維持するための支援データを4つに類型化して大区分している。
第1分類では「普及・指導情報」として基礎的な知識(農作業安全基準、農業機械安全装備基準、安全運動推進要領など)を集約している。第2分類は「事故要因情報」とし、農作業事故調査や原因分析・解明で、それぞれの事故要因に対する安全管理のあり方を保持するための手法等の各種データを統括している。
第3分類は「農作業基本安全情報(スタンダード・セーフティカード)」とし、作物ごとの農作業の安全を確保するための基本データを統括している。農作業の単位を作物ごとの作業工程別に細分化し、安全のあり方や事故発生の回避などに関する必須条件や留意すべきデータを整備している。第4分類は「農作業個人安全情報(パーソナル・セーフティカード)」とし、第3分類をさらに一歩進んだ内容として展開するもので、農業者一人一人の作物別作業工程別の注意事項や安全確保のための支援データを作るものである。ここでは、個人に帰属する固有情報なので、各人が所有するパソコンを利用して作り、自分のパソコン上にデータを蓄積することが基本となる。